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宇宙論(Cosmology)(コスモロジー)
芙苑晶
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インタビュアー: Kate O'Connell
日本語版翻訳:三珠アケミ
日時:2006/03/02
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『宇宙論( Cosmology )』 1998 / 2006
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| Q: |
アルバム『宇宙論( Cosmology )』と、今回デジタル・リマスター盤が発表されたいきさつについて教えて下さい。 |
| 芙苑: |
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『宇宙論( Cosmology )』は、オリジナルは 1998 年に NY の小さなインディペンデント・レーベル Nerve Nets Records からリリースされた僕の 5 枚目のソロ・アルバムで、それまでの僕の音楽的経験を総合したものであり、同時に 90 年代/ 20 世紀をしめくくるトータルな作品として発表されました。
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自分でも気に入っているアルバムの一つであり、90年代の僕のアルバムの中では最も売れた作品だったのですが、残念ながらレーベルが 2000 年に閉鎖されたため、その後長らく廃盤になっていました。
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その後、新しいレーベル Lavalamp Records を NY に設立し(現在はワシントン州に移転している)、古い自分の作品の版権をすべて買い取りました。さらにその後、アメリカや日本のファンクラブなどを通してリサーチしたところ、最もリクエストの多いアルバムだったため、今回リマスター盤をリリースすることになったのです。
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リマスター・サウンド
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| Q: |
リマスター盤は、オリジナルとどのように異なっていますか? まずは気になるサウンドですが。
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| 芙苑: |
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リマスターの方法は、よくある、古いアルバムをただ単に最新の技術でマスタリングをやり直したというものではありません。
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レコーディングに使ったオリジナルのマルチトラック・データからミックス自体をやり直し、ミックスダウン、イコライジング、エフェクト、プリ・マスタリングに至るまで、すべてのプロセスにおいて、僕自身がアーティストとして立ち会ってディレクションしています
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ちょうど 90 年代から 00 年代にかけて、デジタル・オーディオ技術が革新的に進歩しました。しかし反面、その時代その時代特有の、古いサウンドの魅力というものもあるわけですから、ただ新しいクリーンなサウンドを求めるということではなく、当時の機材が持っていた限界の魅力といったものはそのままに残しながら、なおかつ現在の最新のオーディオ機器で再生して楽しめるようなサウンド・スペクトルを再現しようという意図がありました。
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また、ごくわずかではありますが、 98 年のオリジナル盤にはなかったサウンドも含まれています。
というのは、アーティスティックな理由から、レコーディングされながらミックスダウンの時点で削ぎ落としてしまったトラックや、当時のレコーディング技術の限界によって再生しきれず、聞こえていなかった微妙なサウンドもあったので、それらも今回のミックスの時点でよく検討し、欠点の補正という面も含めて、決定版と言えるものを出したかったのです 。
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そういう意味で、言ってみれば、温故知新という価値と同時に、映画で言えばこれはディレクターズ・カット版といった魅力も含んだリマスター盤なのです。
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したがって、非常に時間はかかりましたが、ニューアルバムと言っても過言ではないクオリティに仕上がっていると思います。
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『宇宙論( Cosmology )』だけでなく、すべてのアルバムについて言えることですが、 90 年代以前にリリースした芙苑晶関連の作品は、今後すべてこの方法でリマスターをおこない、永久保存版と言えるクオリティのリマスター盤を、これから随時発表していきたいと思っています
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リマスター・グラフィック
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| Q: |
リマスター盤は、サウンドだけでなく、グラフィックもオリジナルとは一新されていますね
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| 芙苑: |
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これに関しては、賛否両論があるかもしれません。オリジナルはオリジナルの魅力があったし、今回のリマスター盤にはリマスター盤の魅力があるということになるかもしれません 。
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しかし総合的に見て、今回のグラフィックのほうが、よりアルバムのテーマなり、イメージの世界といったものを、より明確に表現しているようにと思います。
とくに今回は、僕のややプライベートなビデオアート作品とリンクしたグラフィックもあって、音楽とビジュアル・アートとの関連といった点でも楽しんでもらえるのではないかと思っています。
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また、ブックレット自体、前よりページ数が増え、凝ったものになっているので、サウンドも含めて、オリジナルをすでに持っている人にも魅力的なアイテムとなっていると思います 。
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ジャケットデザイン、そしてブックレットは、僕自身がアイディアを出し、僕のアルバム・ジャケットをずっと担当してくれているアーティストの野崎ニーナと二人の共同作業によって仕上げています。
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アルバム・テーマ
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| Q: |
アルバムのテーマといったものはあるのでしょうか。 |
| 芙苑: |
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一言で言うとすれば、「時空を超越する」というテーマになるでしょうか。それはしかし、とても大きすぎるテーマで、言ってみれば人類というものが知性を持って以来、ずっと試みてきたテーマでもあったのです 。
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それは時代や文化によって大きく異なり、ある時は文化や宗教であったり、学問や芸術であったり、宇宙探検や、アルタード・ステイツ的な体験などであったりと、さまざまではあるでしょうが、それらは言ってみれば、「超越」という言葉でくくれるものだということに、僕はある時気づいたのです。
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例えて言えば、キューブリックが「 2001 年宇宙の旅」のイントロダクションとエンディングで描いたような、人類が知性を持ち、なにかを学び、進化を遂げ、そして最後に超越した存在と一体となるという、そんなヴィジョンを思い浮かべてもらってもいいかもしれません。
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しかしそれは僕の作者としてのテーマということで、エレクトロニック・ミュージックというのはそういった言葉とか、国境とか、民族固有の文化とは無関係に、地球上の誰でも自由に好きなように聞ける魅力があります。
だからこの音楽を聴く人が 10 万人いるとしたら、 10 万通りの聴き方があり、 10 万通りのイメージが持てるはずですね。
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僕は作曲家として、むしろ、リスナーの人たちがどんなイメージを持ったかを、ぜひ聞かせて欲しいと思っていますよ。
今はウェブなんかがありますから、みんなで自由に書き込みなどに挑戦してみてほしいですね 。
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SFミュージック
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| Q: |
このアルバムが発表された 98 年当時、あなたは「 SF ミュージック」という新しいジャンルを提唱していますが、これについて教えて下さい。 |
| 芙苑: |
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僕自身 SF 映画や SF 小説のファンなんですが、どうして音楽に SF がないのだろうと、以前から不思議に思っていたんです
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SF というのは何でしょうか? 科学の進歩が未来において人間に何をもたらすかを予測するといった一面がクローズアップされがちですが、僕はもうすこし違ったとらえ方をしています。
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それは今言った「超越」ということと関係があります。つまり、人間がその知性の限界、想像力の限界を打ち破って、新たな次元、新たな可能性に突入するということです。
そういったものを提示しうる音楽は、アヴァンギャルド・ミュージックの中にもありますが、しかしアヴァンギャルド・ミュージックは難解なものが多く、ロックやポップのリスナーを惹きつけることはできません。
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僕のやり方は、テクノやハウス、アンビエントやドラムンベースといった現代のエレクトロニック・ミュージックやクラブ・サウンドのようなものと、クラシックやエスニック音楽を結びつけていくことで、まだ人が踏み込んでいない未知の領域を開拓していくといったこと、そしてその連なりによって、未来とか超次元のヴィジョンを SF 映画のようなヴィジュアル・イメージとともに提示するといったスタイルです。
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こういったスタイルを模索しているアーティストは、ジャンルとは無関係に古くからいました。フランスのジャン・ミッシェル・ジャールや、イギリスのマイク・オールドフィールド、ドイツのクラウス・シュルツ。ピンク・フロイドやエニグマのような革新的なスタイルのグループや、そして最近ではオービタルやフューチャー・サウンド・オブ・ロンドンなど、テクノやアンビエントのアーティストにも僕の言う SF ミュージックに該当するアーティストがたくさんいます。
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こういったアーティストたちは、テクノとかアンビエント、プログレッシブ・ロック、モダンクラシカル、ニューエイジといったジャンルに入れられたり、あるいはどこにも入れられなかったりして、しばしばその扱いは曖昧で、居心地が悪いものがあるのですね。
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しかし SF ミュージックというジャンルをあえて設定することで、アーティストにとっても、リスナーにとっても、あるわかりやすいカテゴライゼーション(ジャンル設定)が誕生することになります。
- だからこれは僕からの一つの提案でもあるんです。世界のウェブ・サーチ・エンジンのカテゴリや、世界のレコード店や、世界の音楽雑誌、音楽評論メディアなどが、僕の SF ミュージックという提案を受け入れて、認知し、広めてくれれば、進歩的な試みをおこなうアーティストにとっても、そういう新しい進歩的な音楽を聞きたがっているリスナーの人たちにとって、お互いにメリットがあると思えるからです。
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そして、『宇宙論( Cosmology )』はそのシンボル的な作品として聞かれることも可能であると思うのです。
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シンフォビエントからシンフォニック・テクノへ
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| Q: |
このアルバムは今では、それ以前の『木霊( Echoes )』『荒廃( Ruins )』『伽藍( Cathedral )』のシンフォビエント三部作に続き、「シンフォニック・テクノ」という新ジャンルを打ち立てたエポック・メイキングな作品と言われていますね。この言葉が誕生したいきさつと、エピソードを聞かせて下さい。 |
| 芙苑: |
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それは 95 年の『伽藍( Cathedral )』組曲のレコーディングの後半とつながっているんです。
『伽藍』では僕は自分自身のアルタード・ステイツ的体験を音で描写しようと試みていました。そのために、それまではどちらかというとその影響から逃れようとしていた、僕のルーツである西洋のクラシック音楽、とくに J. S. バッハの教会音楽やワグナーのオペラなどの要素を、あえてテクノやトランス・サウンドと合体させ、超絶的な幻覚のイメージをサウンドで描写してみたんです。
そうするうちに、『伽藍』の後半になって、それまで『木霊』や『荒廃』の時にやっていたような、サイケデリック・シンフォニック・アンビエントと言えるようなアレンジではおさまりきらなくなってきたのです 。
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その結果、『伽藍』はシンフォビエント三部作の最後の作品でありながら、アンビエントとは相反するサイケデリック・トランスやレイヴ、それにシンフォニック・ロック的な要素が強くなってきました。
その時僕は、このスタイルをさらにある方向に発展させると、ひとつの新しいジャンル、地球上の誰もまだ試みていないようなサウンドが作れるはずだということに思い至ったのです。
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『宇宙論( Cosmology )』はいわば、その発展形としての「シンフォニック・テクノ」のおそらく世界初の試みであり、一種の、シンセサイザーによるトータル・コンセプト・アルバムと言えるようなユニークなものへ発展していったんです。
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シンフォニック・テクノとは、シンフォビエント同様、誤解されがちかもしれませんが、たんなる「シンフォニック・ロックとテクノの合成音楽」ではないのです。
むろん広義ではそういう捉え方をしてもらっても全然いいのですが、それは、あらゆる音楽の諸要素を、シンセサイザーをはじめとする電子楽器を使って混合し、合成していくといった、いわば「ごった煮テクノ」と言えるようなものです。
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それがどんなサウンドであるかは、『宇宙論』を聞いてもらえればきっとわかるでしょう。このようなサウンドが未だかつて地球上に存在しなかったものであることもね。
僕がこんなサウンドを創り出したおそらく世界第一人者であるという点は、ちょっと自信があるんですよ。
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レコーディング/楽器/シンテレミン |
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| Q: |
あなたはこれまで、レコーディングに秘密主義を貫いてきましたね。『宇宙論( Cosmology )』のレコーディングはどのように進められたのでしょうか? また、どんな楽器や機材を使いましたか? 差し支えない範囲で教えて下さい。 |
| 芙苑: |
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そう、その点では僕はキューブリックに共感しているし、自分でもキューブリック的だと前から言ってきたんです。
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SF 映画の超大作を創る映画監督が、その裏話や撮影のエピソードを得々と大衆の面前で話してみせることには、ある種の魅力があるのもわかっているけれど、ほんとうに熱心な映画ファンなら、それはよしあしだと思うのではないでしょうか。
その映画にトータルで一体いくらの制作費がかかり、照明や大道具や SFX がどんなに大変だったかを自慢げに喋る監督がいたとしたら、その人が非常に才能がある作家だったとしても、芸術家として一流だとは言えないのではないでしょうか?
だから、僕がそれを言いたくないのではない、むしろ、ほんものの熱心なリスナーたちをシラケさせたくないというのが本音なのです。
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しかし、こういうことは言えるでしょう−−−とても楽しいレコーディングでしたよ。何枚か作ったうちで、一番楽しいレコーディングだったかもしれません。
そしてその楽しさのヴァイブというのは、聴く人に必ず伝わるものだと僕は信じているんです。それが、秘密と言えば最大の秘密かな。
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楽器や機材に関しては、僕はある種のテクノ・ミュージシャンたちのように秘密主義では全然ないんです。
それはいつも訊かれる質問だし、僕自身面倒くさがりで、使った機材なんていちいち覚えちゃいないのがふつうだから、名前はブックレットに全部掲載しているので、見てくれればわかりますよ。
ただ単に、昔から使っているようなシンセサイザーやキーボードをたくさん使っただけですね。
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ただ、個々の楽器を取り上げても音楽的には意味がないと僕は思っているんです。ベースはミニムーグに限るとか、エレピは DX7 がいいんだ、みたいに言う人もいるけれど、僕にはわからないな。
音楽によってはそういう定番的なものがよろこばれることもあるんでしょうけど、僕の音楽はもっとトータルなアンサンブルにおけるサウンド・スペクトルの組み合わせが大事だと思っているから−−−つまりオーケストラみたいな考え方に近いアレンジだから、特定の楽器に対する思い入れみたいなものは、とくに何もないんですね。
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一つ言うと、面白いのは、『宇宙論』で初めて使った楽器として、シンテレミン( Syntheremin )というものがあります。
これは僕自身が日本のエンジニアの協力を得て考案・発明したオリジナル楽器の一つで、シンセサイザーのパラメーター、合成機能、コントロール機能を持った新しい楽器なんです。
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とくに、この楽器の独自の機能として、面白いのは、何本かあるアンテナのそれぞれに対して、シンセサイザーのように個別のパラメーターが対応しているので、あたかもツマミのたくさんついたアナログ・シンセのように各パラメーターをリアルタイム・コントロールできることです。
そしてそれによって、あえてテレミンという楽器の持つ偶然性、ランダムネスをさらに強調し、この楽器ならではの、予測不可能なサイケデリックなサウンドを次々に生み出せるわけです。
だからむしろ、これを通常のクラシックなテレミンのように使うのじゃなくて、古い Buchla のモジュラー・シンセサイザーのように、巨大なランダム・エフェクト・マシーンとして使うのが面白いですね。
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ただ、1号機というか、試作品なので不安定で、すぐにダウンしてしまうのが難点ですけど、改良して、いずれ完成品としての2号機を作りたいですね。
これは、最近では、 小型の試作品を ダモ鈴木ネットワークのジャパンツアーでもちょっと使いましたよ。
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ゲスト・アーティスト |
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| Q: |
このアルバムではいつになく、ゲスト・アーティストも多彩ですね。 |
| 芙苑: |
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そう。その点でも『宇宙論( Cosmology )』は、 90 年代をしめくくる作品というキャラクターにふさわしい気がするんです。と言うか、どこかにそういう意識があったから、いろんな人を呼んでしまったのかもしれませんね。
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ある意味では、ある種のちょっとした同窓会みたいな雰囲気もあったのですね。
つまり、それまでやってきたバンド・プロジェクトのメンバーや、セッションをしてきた個性的なアーティストたちが、『宇宙論』のレコーディング・セッションを通してヴァーチャルに一体となるというエキサイティングな体験を僕らはしたのです。
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テレミン音楽の第一人者でありマルチ・インストゥルメンタリスト、アメリカ人作曲家のエリック・ロス( Eric Ross )、彼は僕の長年の友人でもあり、僕の音楽の最大の理解者の一人でもあります。
彼の演奏はとてもフリーでアヴァンギャルドですが、同時にたいへんユニークで、聴いただけでエリックの音楽だとわかる明白な個性があります。
彼はおもに前半でテレミンとギターシンセを弾いてくれました。カモメの鳴き声みたいな逆回転のサウンドや、幽霊のように不気味なテレミンの音が聞こえたら、それが彼のプレイです。
効果音的なサウンドが多いんだけど、彼がいなかったら『宇宙論』はずいぶん雰囲気が違った作品になっていたでしょうね。
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それから、このアルバムで、サウンドに大きな影響があったと思うのは日本人のギタリストのマダム呪々です。彼のギター・ソロは、ブライアン・メイ風だったり、エイドリアン・ブリュー風だったりと、千変万化の色合いがユニークですね。
『Cosmology 3 』や『Cosmology 5 』の後半に出てくる長いハードロック・ギター・ソロばかりじゃなく、まるでギターのようには聞こえない不思議な音にも、実は彼が弾いたパートがたくさんありますよ。よく聴いて捜してみたら、面白いんじゃないかな。
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他にも、いろんなジャンルからいろんなミュージシャンが参加していますね。
NY で知り合った日本人のアヴァンギャルド・ミュージックのヴォーカリスト・伽藍花子は、いわばローリー・アンダーソンみたいなヴォイス・パフォーマンスを即興でやって、僕がそれをフェアライト CMI (シンセサイザー)にサンプリングしてモンスターみたいな声を作ってますね。
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そして伽藍花子と対照的な、正統的なクラシックの声楽家であるアメリカ人女性のジャニス・ブラッドレイ、『年代記』でソプラノを歌ったあの彼女ですよ。
『年代記』では僕は、彼女の声をオーソドックスなクラシック・ソプラノとして扱ったんだけど、『宇宙論』ではそれと正反対に、テクノ・サウンドとは本来ミスマッチな、不気味な「声」の一種として扱ってみたんです。
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僕が 80-90 年代にかけてやっていた二つのバンド・プロジェクトのメンバーたちも参加してますね。日本のレイヴ・バンド、ファー・イースト・アシッド・ハウス・クワルテット( Far East Acid House Quartet ) の元メンバーだった二人、スペース DJ リョウと田嶋エリサのトラックもあります。
リョウはターンテーブルのスクラッチを、田嶋エリサは囁き声を、それぞれ僕が録って、これもサンプラーで加工して使っています。
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アーティストの野崎ニーナが出した吐く息の音をサンプリングしたパートもあります。
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David Laurenz と DJ Third Eye によるテクノ DJ ・デュオ、ヒプノティック・ツイン( Hypnotic Twin )は僕のデビュー当時からのつき合いで、僕のソロアルバムやファー・イースト・アシッド・ハウス・クワルテットのアルバムにも多数参加してきていますね。
彼らは 僕とともに WA のレーベル、 Lavalamp Records のレーベル・パートナーでもあります。
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日本のトランス・レイヴ・ドーターズ( Trance-Rave Daughters )の、当時まだ 17 才の女子高校生だった DJ アゲハと香港リルの二人は、ゲストの中では間違いなく最年少だったでしょう。
彼女たちが偶然僕のスタジオに遊びにやって来た時に、「何か弾いてみる?」という感じで僕から提案してみたんです。
彼女たちはファー・イースト・アシッド・ハウス・クワルテットのファンでフォロワーでもあり、 1980 年代生まれらしい新しい感覚でアシッド・ハウス/サイケデリック・トランス・サウンドを TB-303 などのシンセでその場で即興的に演奏してくれましたよ。そしてそれが彼女たちの公的な最初のレコーディングになったんです。
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ニューシングル/リミックス |
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| Q: |
今回また、ニューシングルやクラブ・リミックスの予定もあるということですが?
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| 芙苑: |
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『宇宙論』のオリジナル盤がリリースされた当時も、クラブ DJ がよくリミックスしてくれていて、当時も『宇宙論入門( A Guide To Cosmology )』というリミックス・アルバムが出たんですが、今回また新たな視点でリミックス・トラックを制作し始めているんです。
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今言ったトランス・レイヴ・ドーターズの二人と僕自身が中心になって、 21 世紀のクラブ・トラックという視点から、去年( 05 年)あたりからプロジェクトを進めてますよ。
今のクラブ世代の人たちとコラボレートすることで、斬新なユニークなものを作れたらいいなと思ってますね。
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クラブ・リミックスは、ソロ・(オリジナル・)アルバムに比べると遊びの要素が大きいし、いい意味で無責任になれるから、楽しめますね。シリアスなミュージシャンやファンたちの中は、アキ・フゾノがクラブ・リミックスなんかやるのは才能の無駄遣いだと思っている人もいるみたいなんだけど、僕はそうは思ってないんです。
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つまり、そういう遊びみたいな行為の中から、ほんとうにクリエイティブなものが生まれてくる可能性があるわけだから−−−ちょうど僕が 80-90 年代に、ファー・イースト・アシッド・ハウス・クワルテットのようなプロジェクトに参加していたことで、レイヴやトランス・ミュージックの影響を自分のソロ・アルバムにフィードバックして、よりハイブリッドでオリジナルな音楽を作っていったようにね。
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シングル・カットというのは、今のところはとくに考えていないんです。『Cosmology 5 』や『Cosmology 3 』のように、独立したトラックとしてクラブでよく DJ がプレイするシングルっぽい曲もあるんだけど、本来、僕の曲は、1曲1曲聴いてもいいけれど、むしろアルバム全体を通して聴くほうが楽しめるものだと思うからね。
だから、こっちのほうは未定です。
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いずれも、いつどうなるかというのはわからないけれど、今年か来年ぐらいに出せるといいですね。そういうものが出てくることで、このアルバムの多彩な魅力みたいなものがより幅広く伝わるといいなと思ってますね。
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